
「ゼロクリック検索」という言葉をご存知でしょうか。Googleが検索結果ページ上で直接回答を表示するようになり、ユーザーがどのウェブサイトもクリックせずに疑問を解決してしまう——そういった検索のことを指します。AIO(AI Overview:AI生成の検索概要)の普及によって、この傾向はさらに強まっています。
こうした変化を前に「リスティング広告も無駄になるのでは」という声が出てくるのは自然なことです。しかし実際には、ゼロクリック検索が増えるほどリスティング広告の相対的な価値は高まる、という逆説的な側面があります。
ゼロクリックで済む検索は、「今日の天気は?」「〇〇の意味は?」など、調べたいことが明確な情報収集型の検索です。一方、「税理士 顧問 相談」「リフォーム 見積もり 東京」のような商業的な意図を持つ検索は、AIが一つの答えを返せるものではありません。比較・選択・決断が必要だからです。
リスティング広告が効果を発揮するのは、まさにこの「何かをしたい・依頼したい」という購買意図を持った検索です。ゼロクリック検索に置き換えられる部分はもともとリスティング広告の主戦場ではなかった、とも言えます。
Googleが検索ページにAIOを掲載しても、広告枠はその上や下に表示され続けています。むしろ、オーガニック検索結果が押し下げられた分、有料広告の存在感が増しているケースもあります。自然検索での上位表示が難しくなれば、広告による露出の重要性は下がるどころか上がります。
SEO(検索エンジン最適化)に依存していた企業ほど、AIOの影響を大きく受けます。逆にリスティング広告を軸にしている企業にとっては、競合がSEOからシフトしてくる前に先行できるチャンスでもあります。
クリックされなくても、検索結果に広告が表示されること自体がブランド認知に寄与します。「〇〇と言えばこの会社」という印象を繰り返し植え付けることで、後から指名検索につながることも少なくありません。ゼロクリック時代だからこそ、インプレッションの価値を再評価する視点も持っておきたいところです。
情報収集の方法がどれだけ変わっても、人が何かを買うとき・誰かに依頼するときには意思決定のプロセスがあります。その過程で生まれる「明確な意図を持った検索」に応えられるリスティング広告は、ゼロクリック検索の増加によって揺らぐものではありません。むしろ、その価値を正しく理解して使い続けることが、変化の激しい時代における広告戦略の土台になります。
株式会社アイエムシー 大塚雅智
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